そこは、一言では言い表せない、混沌とした世界だった。
右を見れば軍隊が物々しく行進し、左を見れば竜が飛び交っている。
後ろを見れば地形が畝る。平たく言えば、「岩が浮かんでいる」だ。
そして前を見れば…例の少女が何やら一人でまくしたてている。

「・・・ちょっと!約束が違うじゃないの!」
「だから言ってるでしょ!3人だって!・・・え?予定にない?そんなもん誤差の範囲でしょーが!」
「はいはい!こっちのせいでしょ!私の給料から差っ引いといてよ!じゃね!」

「まったくもう・・・あ、気付いた?」
「ん・・・まぁ・・・ね」

少女の会話の意味はわからない。
わかりたいのは今の状況だ。

「あのさ、とりあえず色々聞きたいんだけど」
「んー、そうだよね。いきなり連れて来ちゃってごめんごめん。
とりあえずここはやかましいから・・・ちょっとお店入ろうか。
意外と呪文ってお腹すくのよ。かける方もかけられた方も」

どういう理屈かは知らないが、確かに腹は減っている。

「いい店を頼みたいもんだね」
「そうこなくっちゃ!ここならそうね・・・ついてきて!」

言って少女は走りだす。仕方無しに付いていく。
大学生になってからというものの、ろくに運動していないから妙に疲れる。
どこの国かわからない人種、人ですらない生き物とすれ違った。
初めて見る光景の筈が、心のどこかで薄々感づいていた。

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「いやー、ここの芋焼酎はやっぱ最高だわ!」
見た目小学生の少女が、飲んだくれている。
「ここは私の馴染みの店だからさ、好きなだけ飲んでいいよ。あ、おにーさん、次はハイボールね」
店員は慣れた顔つきで、少女のオーダーを了承する。
「一応聞くけど、未成年じゃないよな?」
「あん?れでぃーに歳を聞く気?失礼な人ね」
「いや、そういう問題じゃなくてだな」
「安心してよ。ここは『そっち』とは違うんだからさ」

そろそろ本題に入りたい。

「ここは一体どこなんだ?俺はなぜ連れて来られた?」
いきなり核心を突く。

「・・・落ち着いて聞いてね」

少女の顔が、不意に真剣になる。
「ここは、M・T・Gの世界の中。カードの中と言ってもいいわね。
 あなたは、2つ世界を救うために来たの。
 カードの世界と、現実の世界。
 その『素質』のある者を、『プレインズ・ウォーカー』と呼ぶわ。
 あなたと、一緒にいた男の子がそうよ。
 だから、連れてきたの。
 お願い、世界を救って」

・・・俺は思った。

意味がわからん、と。

「・・・そいつあすげぇや・・・」

溜息しか出なかった。



次回:第3話「闘う術」

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